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【専門医がわかりやすく答える】妊娠糖尿病とは?

[2023.01.02]

<答える人> エリ先生:糖尿病専門医、1歳男児の母。趣味は音楽舞台鑑賞(特にバレエ)
<質問する人> オペラ子:色々な事に興味津々な23歳。趣味は食べる事と筋トレ

Q1:妊娠糖尿病ってどんな病気なのですか?
A: 妊娠糖尿病とは、「妊娠中に初めて発見もしくは発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常」と定義されます。(※妊娠中の糖代謝異常には、この妊娠糖尿病の他に、「妊娠中に診断された明らかな糖尿病」、「糖尿病合併妊娠」、という病態があります。)少し難しいかもしれませんが、これらの違いはしっかり分けて考えましょう。

 

Q2:どうすると妊娠糖尿病と分かるのですか?
A: 妊娠の初診時に採血で随時血糖をはかり、これが高いときにはブドウ糖負荷試験をして診断します。妊娠初期に陰性であった人も、妊娠が進むにつれ血糖を下げるインスリンというホルモンが効きにくくなるため、妊娠中期(24~28週)にもう一度検査をうける機会があります。
妊婦さんの7~9%は妊娠糖尿病と診断されるため、是非検査を受けましょう。
特に肥満、糖尿病の家族歴のある人、高齢妊娠、巨大児出産既往のある人などはハイリスクですので是非検査をうけてくださいね。

 

Q3:妊娠糖尿病になるとお腹の中の赤ちゃんに影響はあるのでしょうか?
A:お母さんの血糖値が高い状態が続くと、赤ちゃんに運ばれる糖も増えて、赤ちゃんも高血糖になります。そうすると結果的にお腹の赤ちゃんの栄養が多すぎる状態になり、巨大児や奇形を起したり、体のサイズに見合った臓器の成長が間に合わない事で、呼吸障害や代謝異常を起こすことがあります。
さらに、出産でお母さんからの糖(栄養)の供給が急に途絶えると、赤ちゃんが頑張って作っていたインスリンの量に対して糖の量が不足し、低血糖や新生児仮死などのリスクにつながる場合もあります。
また、無事に生まれた後にも、子どもが将来的に肥満や糖尿病などを発症するリスクがあるとされているので、妊娠糖尿病はきちんと診断を受け、適切な管理をして、出産を迎えることがとても大切です。

 

Q4:妊娠糖尿病になると、お母さん自身にはどんな心配があるのでしょうか?
A:血糖値のコントロールをしないままでいると、お母さん自身も流産や早産、妊娠高血圧症候群、羊水過多などの合併症や、巨大児出産による難産のリスクも出てきてしまいます。

 

Q5:妊娠糖尿病の治療はどんな方法があるのでしょうか?そして妊娠中、どんなことに気を付けたらよいのでしょうか?
A:母子ともに健康で出産を迎えるために、妊娠糖尿病と診断されたらまずは食事療法から開始します。カロリーを見直し、適度な炭水化物やタンパク質、野菜をしっかりとるバランスの良い食事をしましょう。血糖値を気にするあまり、極端な炭水化物制限(糖質制限)に走ってしまう方が多く見受けられますが、そのことで、赤ちゃんへの栄養(糖)が充分に供給できず、短期的・長期的にもお子様に影響が出る可能性があります。それを避けるためにも、1日の食事量を4~6回に分食をするのも妊娠糖尿病には良い方法です。
ただ、妊娠中は食べ物の好みや味覚が変わり、食べられる物や量も人それぞれになります。
なので、「食べられる物を食べられるときに」ということが前提での食事療法と考えます。
そのため血糖値の管理が食事療法だけではうまく行かない場合には、安全な薬物療法(インスリン治療)を選択します。
しかしながらインスリン治療をすることを躊躇する方が一定数おられるのも事実です。そのお気持ちは十分に理解できますが、最も優先すべきは母子ともに安全に妊娠~出産までを過ごすことと、その後の長期的な母と子の健康ではないでしょうか。そのためにも、治療は必要とお考えいただき、適切な方法を主治医とご相談いただけたらと思います。

 

Q6:出産したら妊娠糖尿病は治りますか?
産後は何に気を付けたらよいですか?
A:妊娠糖尿病は、妊娠期間だけの病気で、多くの方は産後に正常に戻ります。妊娠中にインスリン治療をしていた方も、産後は中止できることがほとんどです。
ただ、産後も糖代謝の異常が残る場合もあるので、産後に再度、検査を受けて確認していただくことをお勧めしています。
妊娠糖尿病を発症された方はそうでない方に比べ、将来的な糖尿病発症リスクが約7倍というデータもあります。なので、産後に検査で異常がなくても「将来的にハイリスク」であることを意識して、肥満にならないなど、生活習慣や健康管理に気を配っていただきたいと思います。
出産後はお子様の事が優先になり、ご自身のことは後回しになりがちですが、産後に再度、医療機関で検査を受けていただき、その結果に応じて定期的な通院、もしくは年に1回の健康診断などでご自身の糖尿病発症予防を続けていただけたら何よりです。

 

Q7:最後に、教えてください。
健診時や病院などで「既往歴(今までの病歴)」を聞かれることがよくありますが、「妊娠糖尿病」も既往として書いた方が良いでしょうか?
A:はい、記載をお願い致します。糖尿病を含む生活習慣病の診断・治療に役立ち、指導をする際にリスク因子としてアドバイスすることができるので、よりよい治療や指導をお受けいただけると思います。

 

オペラ子:エリ先生、妊娠糖尿病についてとてもよくわかりました。有難うございました。でも、小さな赤ちゃんを連れて病院に行くのは大変だし、一緒に連れて行って良いのか迷うお母様もおられると思うのですが・・・。
エリ先生:赤ちゃん連れの通院は、とても大変ですよね。私も子育てしているのでよくわかります!
オペラシティクリニックの金曜日午前は予約制でお子様連れでもお越し頂けます。糖尿や甲状腺など、気になることがあれば、いつでもご相談ください。
Webからもご予約いただけます)

妊婦・妊娠のイラスト(赤ちゃん)

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